隠れ御曹司の愛に絡めとられて

「あと、結婚式のことも、ありがとう。若月ちゃんたちと一緒に挙げようって提案したのは楓くんだって聞いた」

「それはまあ、招待客はほとんど一緒だからね、その方がいろいろ手間が省けるからね」

「……それだけじゃないよね?」

「んー? どうだったかなぁ、忘れちゃったなぁ」


とぼけているけれど、若月ちゃんのことを気にかけてのことだと分かっている。

彼女はいろいろ事情があって家族や親戚とは完全に疎遠で、なおかつ彼女は少し心に傷を抱えている。

専務と結婚することは彼女にとってとてもしあわせなことだけれど、たったひとりで式に臨むのはとても心細かったはずだ。

私なんかが彼女の心の支えになれるはずもないけれど、心細さを分かち合える同志ぐらいにはなれると思う。

私自身、若月ちゃんがいてくれて本当に良かったと思う場面ばかりだった。

彼女がもし、少しでも気持ちが楽になることがあったのだとしたら嬉しいのだけれど……。


「楓くんのそういうところ、好きだよ」

「……亜矢さんには敵わないなぁ」

「私だって、楓くんには敵わないって思ってるよ、毎日」

「ふふっ、本当?」

「本当」


ふわふわ笑ってる楓くんが可愛くて、でも格好良くて、本当に本当に大好きすぎてたまらない。

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