隠れ御曹司の愛に絡めとられて

このドレスの背中側は全てボタンになっている。

彼に背中を委ねるように背を向けると、後ろから柔らかく抱き締められた。


「……外してくれないの?」

「外すよ。僕の奥さんはせっかちさんだね。ふふふ」


楓くんはそう言って柔らかく笑うと、ボタンを止めたままの状態でも大きく開いている私の背中に口付けを落とす。

ゾクリとして身体が少し跳ねると、楓くんが小さく笑った。


「……楓くん」


焦らされてるのだと分かり、恨みを込めて名前を呼ぶ。

気づいているくせに、今度は肩口へと唇を押し付けて軽く舌先で私の肌をくすぐった。


「もう、楓くんってば……っ」

「ふふ……、だって、ドレス姿も素敵だからさぁ。脱がせるのもちょっと惜しいよねぇ、ふふふ」


そう言って、むき出しの背中を指で、つぅ、となぞる。

予想していなかった甘美な刺激にまた体が跳ね、息を呑んだ。

背後でまた、ふふっ、と楓くんが笑う。

私を焦らして楽しんでいるのだから、本当に悪い男だ。


「ね、え、楓くん……っ!」

「ふふ、なに? 奥さん」

「……もうっ」


私はクルリと楓くんへと向き直り、彼の唇へ噛みつくように口づける。

私の攻撃的なキスに抵抗する様子はなく、私の好きなようにさせてくれているけれど……。

そうじゃない。

私が欲しいのは、それじゃない。

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