隠れ御曹司の愛に絡めとられて
思わず頭に思い浮かんだ彼の半裸姿を、ブンブンと頭を左右に振って吹き飛ばす。
顔が、あっつい。
そ、それよりもっ!
腕時計だよ、腕時計っ。
あの見覚えのない男物の腕時計がどこから来たのか、どうして私のカバンの中に紛れ込んだのかを考えなきゃ!
今朝のことを赤面しながら一通り思い出す作業をしたけれど、思い当たることはひとつだった。
私のカバンは、ベッドの近くに置かれていた。
それも、ベッド横にあるサイドボードの前に。
サイドボードには、彼の携帯電話が置かれていたのをぼんやりと覚えてる。
考えられるのは、腕時計もきっとそこに置かれていて、何かの拍子にそこから落ちて私のカバンの中に――。
「……それぐらいしか思い浮かばないんだよねぇ」
ソファに身を投げたまま、私はひとり言をつぶやく。
もし彼のものじゃなければ、もう誰のものなのか分からない。
とりあえず彼にもう一度会って、尋ねてみるしかない。
私はソファからのそりと起き上がって、外出する準備を始めた――。