隠れ御曹司の愛に絡めとられて
……だって、似てるんだもん。
それに、どうしても本名を思い出せない。
だから仕方なくて……。
私は、画面を開いては、暗転させ。
暗転させては、開き……。
何度もそれを繰り返し、最終的には真っ黒な画面で終わる。
そんなことをしたところで、思い出せるはずもないのだけど……。
私は、はぁ、と大きなため息を吐きだして、スマホをベッド横のテーブルに置いた。
自室のベッドにゴロリと寝転んで天井を見上げると、見慣れた冴えないベージュ色の天井が私を見下ろしている。
彼の家の天井はすごく高かったな……なんて思い出してしまって、思わず眉間に皺を寄せた。
なんで私、メープルくんの家の天井なんて思い出してるのよ?
思い出すべきなのはそれじゃない、彼の名前だ。
けれどもそれは一向に思い出せる気配がない。
当たり前だ、真剣に聞いていなかったし、覚える気もなかった。
だってあの時は、まさかこんな展開になるとは思いもしなかったから。
心の中で言い訳をしていると、テーブルに置いていた携帯が鳴り始めた。
心臓がドキリと音を立てる。
発信主は、美紀だ。
なんだ、無駄にドキドキして損した……。
「もしもしー」
『亜矢~。あのさぁ、ちょっと聞きたいことがあって!』
「うん? どうした??」
『あのさぁ、このあいだの合コン。あのあと、代役の男の子とどうなったか聞いてないなーと思って!』