隠れ御曹司の愛に絡めとられて

はぁ、と、ため息をつく。

初対面の男が同席する場で飲み過ぎた私が悪い。

でもまさか、お持ち帰りされちゃうとは、思ってもみなかった。

それとも、酔った私を介抱して親切に一晩泊めてくれただけなのか……。

もやもやした思いのまま私は身体をすみずみまで洗い、ジャグジーに浸かった――。


――バスローブを拝借して洗面室からから出る。

ベッドルームは遮光カーテンが全開になっていて、冬の朝の柔らかい光が室内に届いていた。

そこでようやくこの部屋の全貌が分かった。

とても天井が高く、インテリアは……いわゆるブルックリンスタイルと言うのだろうか。

コンクリートとレンガの壁、木製の床、アイアン製の電気スタンド、ビンテージっぽいサイドテーブル。

全体的にトーンを抑えた感じに仕上げているので、ざっくりとした印象を持ちつつもとて落ち着く雰囲気だ。


それにしても広い家に住んでるな、なんて考えながら、私はさっき彼が消えていった扉をゆっくりと開いた。

すぐに私に気づいた彼が人懐っこい笑顔で「あ、お風呂上がった?」と声を掛けてくる。

今まで私のそばに居たことがないタイプの男だ、と思う。

彼が動くたびに、少しウェーブしている柔らかそうな茶色い髪がふわりと揺れる。

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