轍(わだち)〜その恋はお膳立てありき?
その証拠に、タカシは初めに会った時と同じ無表情で身支度を整えていく。
しかし、タダで素敵な大胸筋や上腕二頭筋を拝めるのはありがたい。
“今後の絵の参考にさせてもらおうかな···”
「そんなに見つめて、お前も社長と同じ痴女なのか」
そんな身も蓋もない清乃の思考が透けて見えたのか、タカシは呆れたように言った。
“それなら、目の前で脱がなきゃいいのに···むむ···ちょっと待てよ、今何て?”
タカシの発言には、一部聞き捨てならないワードが含まえていたような。
『社長と同じ』ということは、滋子もタカシの美しい筋肉を拝んだ、もしくは拝める関係だということか?
可愛くて、見かけだけは女らしい滋子。
『男には困っていない』とのたまっていたが、こんなテンプレイケメンとも関係があったとは。
「過去の男、いや、もしかするなら今彼···の相手をさせて、私を試そうと?もしかして物理的に殺られる?!」
昨日まで、戦国ものの恋愛ゲーム作成にどっぷり浸かっていた清乃だったが、そんな話があったかな?と清乃は振り返る。
「···本当にあいつから何も聞いてないんだな」
呆れたように呟いたタカシの言葉は、考え得る略奪愛のゲームシナリオを、必死で脳内検索する清乃の残念な頭には全く聞こえていなかった。
「···俺は」
「タカシさま、朝食でございます」
何か言いたげなタカシの声を阻むように、黒尽くめのSPといった風防の男性がカートを押して入ってきた。
“ん?どこかで見たような?”
一連の流れですっかり忘れていたが、目の前に現れた彼は、服装こそ昨日とは異なるが、あの滋子の敏腕秘書、手練の人斬り?!
ここに参上したということは、当然、一流高級料理店での清乃の一連の失態と、彼女がホテルの一室で滋子の彼(仮)と一夜を共にしたことは知られているはずで···!
「お、拝み打ちを···」
拝み打ちとは、サムライ用語で、相手の成仏を祈りながら斬ること。
せめて楽に死にたい、と両手を重ねて祈る清乃を尻目に、人斬り秘書は朝食の載ったカートを置くと、さっさと部屋を出ていった。
「···俺は用事ができたらしい。君はこれから好きにしろ」
カートの隅に載せられていたメモらしきものを手に取ったタカシは、中身を確認すると、眉間にしわを寄せてそう言い放った。
「宿泊代は···」
「社長に払わせると言っただろう。昨日の飯代も同じだ」
なるほど、先程、人斬り秘書が持ち込んだメモには、秘密裏の指示が書かれていたのだと清乃は理解した。
「わかりました。色々とお世話様でした」
清乃は、部屋を出ようとするタカシに、立ち上がってお礼を述べた。
タカシが食事も取らずにこの場を去るからと言って、清乃が用意された朝食を無駄にするつもりはサラサラない。
寒波の影響で、ホテルの外のコンビニに食料が残されているとは限らないのだから。
「···引き止めすらしないか」
去り際に小さく呟いたタカシの言葉は、清乃のもとには届かない。
何せ、清乃の目の前にあるのは、ホテル名物“激ウマフレンチトースト”
彼女にとって、花より団子は常識なのだから。
しかし、タダで素敵な大胸筋や上腕二頭筋を拝めるのはありがたい。
“今後の絵の参考にさせてもらおうかな···”
「そんなに見つめて、お前も社長と同じ痴女なのか」
そんな身も蓋もない清乃の思考が透けて見えたのか、タカシは呆れたように言った。
“それなら、目の前で脱がなきゃいいのに···むむ···ちょっと待てよ、今何て?”
タカシの発言には、一部聞き捨てならないワードが含まえていたような。
『社長と同じ』ということは、滋子もタカシの美しい筋肉を拝んだ、もしくは拝める関係だということか?
可愛くて、見かけだけは女らしい滋子。
『男には困っていない』とのたまっていたが、こんなテンプレイケメンとも関係があったとは。
「過去の男、いや、もしかするなら今彼···の相手をさせて、私を試そうと?もしかして物理的に殺られる?!」
昨日まで、戦国ものの恋愛ゲーム作成にどっぷり浸かっていた清乃だったが、そんな話があったかな?と清乃は振り返る。
「···本当にあいつから何も聞いてないんだな」
呆れたように呟いたタカシの言葉は、考え得る略奪愛のゲームシナリオを、必死で脳内検索する清乃の残念な頭には全く聞こえていなかった。
「···俺は」
「タカシさま、朝食でございます」
何か言いたげなタカシの声を阻むように、黒尽くめのSPといった風防の男性がカートを押して入ってきた。
“ん?どこかで見たような?”
一連の流れですっかり忘れていたが、目の前に現れた彼は、服装こそ昨日とは異なるが、あの滋子の敏腕秘書、手練の人斬り?!
ここに参上したということは、当然、一流高級料理店での清乃の一連の失態と、彼女がホテルの一室で滋子の彼(仮)と一夜を共にしたことは知られているはずで···!
「お、拝み打ちを···」
拝み打ちとは、サムライ用語で、相手の成仏を祈りながら斬ること。
せめて楽に死にたい、と両手を重ねて祈る清乃を尻目に、人斬り秘書は朝食の載ったカートを置くと、さっさと部屋を出ていった。
「···俺は用事ができたらしい。君はこれから好きにしろ」
カートの隅に載せられていたメモらしきものを手に取ったタカシは、中身を確認すると、眉間にしわを寄せてそう言い放った。
「宿泊代は···」
「社長に払わせると言っただろう。昨日の飯代も同じだ」
なるほど、先程、人斬り秘書が持ち込んだメモには、秘密裏の指示が書かれていたのだと清乃は理解した。
「わかりました。色々とお世話様でした」
清乃は、部屋を出ようとするタカシに、立ち上がってお礼を述べた。
タカシが食事も取らずにこの場を去るからと言って、清乃が用意された朝食を無駄にするつもりはサラサラない。
寒波の影響で、ホテルの外のコンビニに食料が残されているとは限らないのだから。
「···引き止めすらしないか」
去り際に小さく呟いたタカシの言葉は、清乃のもとには届かない。
何せ、清乃の目の前にあるのは、ホテル名物“激ウマフレンチトースト”
彼女にとって、花より団子は常識なのだから。