轍(わだち)〜その恋はお膳立てありき?
この作品、キャラクターデザインを手掛けたのは、なんと、あの神絵師である狼犬《ウルハイ》様だ。
狼犬《ウルハイ》はこれまでは、アマチュアとしての活動がメインで、小説の挿絵や漫画、ゲームに参入していなかった。
清乃もそのことに疑問を抱いていたのだが、実際は、狼犬《ウルハイ》に届いていたオファーは数知れずだったようだ。
結局は、狼犬《ウルハイ》自身が全てのオファーを断っていたのだが、なんの気紛れが、滋子のゴリ推しか、偶然にも清乃が滋子の会社に入社したタイミングで、狼犬《ウルハイ》が新ゲームのキャラデザを引き受ける流れになったのだ。
大手の場合、1つのゲームが出来上がるまでに、たくさんの子会社に依頼を出すことがあり、必然的に多くの造り手が関わることになる。
キャラデザインを行うデザイナー、複数枚の絵を作成するイラストレーター、動画担当者、不具合を調整するエンジニアなどなど。
清乃は今回の仕事で、莫大な時間と労力を持って、1つのゲームが作られることを知った。
一人のキャラクターだけ見ても、様々な表情、衣装、ポージングなど、多数のイラストが必要となる。
そこに動きをつけるとなると、実際に動かして見るまでは不具合が分からず、やり直し、といったことが多々ある。
アニメや動画も同じ。
学生時代、動画の制作過程を知っていたとはいえ、あまり深く考えずに、推し絵に癒やされていたことを思い出し、思わず、清乃は目の前のポスターを拝むポーズを取るのだった。
2年越しのプロジェクト。
絵師本人である狼犬《ウルハイ》が会議に現れることはついぞ一編たりともなかったが、ゲーム自体の検討会議は何度も何度も繰り返された。
滋子の会社が、ゲーム業界には初参戦ということもあり、大手のように下請け企業のヘルプもあまり期待できない。
そのため、極力、少数精鋭で制作に勤しんでいたのだが、正直、限界に近かった。
同じ道を歩んで来ており、今では大手企業の社長となっているその道のベテランクリエーターの助言ももらいながら、ようやく今回の完成にこぎつけたのだ。
『ここまで難儀でござったな』
メイン攻略対象揃い踏みのポスターの中から、清乃の担当した戦国武将の一人が笑顔で囁いた(気がした)。
このあと、最終的な不具合の検証をして、件の戦国系乙女ゲームは満を持して発売される。
清乃は、神絵師の渾身の作品であるポスターを眺めながら、
「このポスター、後で絶対滋子に貰おう!」
と心に誓って、家路に向かうのだった。
狼犬《ウルハイ》はこれまでは、アマチュアとしての活動がメインで、小説の挿絵や漫画、ゲームに参入していなかった。
清乃もそのことに疑問を抱いていたのだが、実際は、狼犬《ウルハイ》に届いていたオファーは数知れずだったようだ。
結局は、狼犬《ウルハイ》自身が全てのオファーを断っていたのだが、なんの気紛れが、滋子のゴリ推しか、偶然にも清乃が滋子の会社に入社したタイミングで、狼犬《ウルハイ》が新ゲームのキャラデザを引き受ける流れになったのだ。
大手の場合、1つのゲームが出来上がるまでに、たくさんの子会社に依頼を出すことがあり、必然的に多くの造り手が関わることになる。
キャラデザインを行うデザイナー、複数枚の絵を作成するイラストレーター、動画担当者、不具合を調整するエンジニアなどなど。
清乃は今回の仕事で、莫大な時間と労力を持って、1つのゲームが作られることを知った。
一人のキャラクターだけ見ても、様々な表情、衣装、ポージングなど、多数のイラストが必要となる。
そこに動きをつけるとなると、実際に動かして見るまでは不具合が分からず、やり直し、といったことが多々ある。
アニメや動画も同じ。
学生時代、動画の制作過程を知っていたとはいえ、あまり深く考えずに、推し絵に癒やされていたことを思い出し、思わず、清乃は目の前のポスターを拝むポーズを取るのだった。
2年越しのプロジェクト。
絵師本人である狼犬《ウルハイ》が会議に現れることはついぞ一編たりともなかったが、ゲーム自体の検討会議は何度も何度も繰り返された。
滋子の会社が、ゲーム業界には初参戦ということもあり、大手のように下請け企業のヘルプもあまり期待できない。
そのため、極力、少数精鋭で制作に勤しんでいたのだが、正直、限界に近かった。
同じ道を歩んで来ており、今では大手企業の社長となっているその道のベテランクリエーターの助言ももらいながら、ようやく今回の完成にこぎつけたのだ。
『ここまで難儀でござったな』
メイン攻略対象揃い踏みのポスターの中から、清乃の担当した戦国武将の一人が笑顔で囁いた(気がした)。
このあと、最終的な不具合の検証をして、件の戦国系乙女ゲームは満を持して発売される。
清乃は、神絵師の渾身の作品であるポスターを眺めながら、
「このポスター、後で絶対滋子に貰おう!」
と心に誓って、家路に向かうのだった。