轍(わだち)〜その恋はお膳立てありき?
「ち、千紘さんも狼犬《ウルハイ》の二次創作者であられましたか!クオリティが作者レベルでござるな」

「なんでそうなる」

「デスヨネ〜」

苦笑する千紘。

清乃は持っていたペンをギュッと握りしめ、さっきから自分の脳内に浮かぶ、ある真実を、認めたいような、認めたくないような複雑な感情に駆られ悶えていた。

「もしや、ち、千紘さんが···プロデューサーが、狼犬《ウルハイ》だったとか?」

「幻滅したか?こんな俺様陰キャで」

「まさか!規格外のご褒美、ご馳走様としか言えません!」

「ブッ」

清乃は、滋子の言った通り、テンプレが大好物だった。

陰キャがプロデューサーで、キャラデザイナーで、神絵師とか···。

しかもその正体は俺様イケメンとか。

テンプレも、ここまで来ると、やはり滋子の仕込んだネタとしか思えないが、滋子とは違って、実はお人好しで不器用な千紘には簡単に人は騙せそうにない。

それよりも、目の前で展開された作画工程は、動画サイトで狼犬《ウルハイ》が見せているものと寸分の狂いもなかった。

ましてや、激推ファンの清乃に、狼犬《ウルハイ》の絵のクオリティや色合いに誤魔化しはきかない。

彼は本物の狼犬《ウルハイ》で間違いない!

と、清乃は拝みながら結論付けた。

「で、で、そのキャラの立ち位置は?」

銀髪でサラサラショートヘアの中性的なキャラは、これまでに登場している戦国武将とは明らかに路線が異なり、無駄にキラキラしていて、うむ、推せる。

「男装した武将だ」

「おっふ、ヒロインのライバル的な立ち位置ですか、それとも叶わぬ恋···推せる」

画面を覗き込んで、グフフと笑う清乃に

「お前がモデルだ」

「ぐはぁ!」

ファンなら血を吐いて倒れそうな、激アツワードを解き放って、千紘は清乃にとどめを刺しにかかった。

確信犯である。




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