轍(わだち)〜その恋はお膳立てありき?
千紘のお助けもあり、清乃に課せられたリテイクの修正は夕方には終わった。
出来上がったデータを保存し、春日に渡すと、彼はいつもの人斬り···いや、忍びのような身のこなしで、部屋を素早く出ていった。
「オッケー、これでなんとか納期に間に合ったわね。約束通り3日休みをやるから、清乃も羽根を伸ばすといいわ」
「ありがとう。滋子、大好き」
「おうよ」
中性的な清乃を見た目だけは小柄な少女風の滋子が抱きとめる絵面。
周りから見れば、逆じゃね?という立ち位置も、この二人にとってはこちらが正解だ。
儚げな見た目に反して男らしい滋子と、凛とした美少年枠の外見に反して妄想爆発している清乃。
「新たな扉が開きそうだな」
目の前に展開される百合GL(ガールズラブ)的な展開に、千絋は興味深げに鉛筆を取っていた。
「丁度いいじゃない。清乃をモデルにした新キャラの相手役、早くキャラデザしてくれてもいいのよ」
「えっ?それ見たい!」
サッと滋子から体を離し、千絋のスケッチブックを覗きこもうとする清乃はかなり距離が近い。
そのことを気にも止めずに受け入れている千絋も、普段の警戒具合からは考えられないほどリラックスしている様子だ。
それを見て満足気に笑っている滋子だったが、突然、思い立ったかのように
「そうだ、清乃。千絋さんは新キャラ開発以外仕事はないらしいよ。せっかくだから休みの3日間、一緒に遊んでもらいな」
と言った。
「何がせっかくだからよ。これ以上、滋子の我儘に千紘さんを巻き込むわけには···」
滋子に振り回されてきたと自覚のある清乃は、同じように巻き込まれた感満載の千紘に深い同情を覚えていた。
「原画」
「!?」
「千紘さんちには、お宝の山が」
「み、見たい」
しかし、三度の飯や睡眠よりも大好きで大切な狼犬《ウルハイ》の原画を見ることができるという誘惑に、清乃の硝子の理性は吹き飛んだ。
「よし、決まったぁ。千紘さん、最近、ハウスキーパーが辞めて困ったって言ってたわよね?この、清乃が立候補するって」
「え、ハウスキーパーは春日が···」
「辞·め·て困ってるのよね!」
「ああ」
千紘の言動から、春日が原因で千紘の家に出入りしていたハウスキーパーが、最近やめさせられたのだと、清乃は把握した。
「千紘さん、私、1からの創作はできませんが、料理や洗濯などの誰でもできる定型的な2次創作は得意なんです。次のハウスキーパーが見つかるまで、お手伝いさせてください!」
清乃は、千紘のプライベートゾーン、即ち狼犬《ウルハイ》の制作現場に立ち入ることのできるチャンスを逃すまい、と食い気味に千紘に詰め寄った。
「これまでのハウスキーパーが来ないのなら俺も困るな。申し訳ないが、頼んでもいいか?」
「喜んで!」
もはや、清乃の頭の中には狼犬《ウルハイ》の原画のことでいっぱいとなっていた。
清乃と千紘を乗せた馬車は、滋子が描いた轍《ワダチ》を踏んで進んでいく。
自覚しているのか、無自覚か。
二人の縁は今後も、複雑な様で実に単純に絡み合っていく···のかもしれない。
出来上がったデータを保存し、春日に渡すと、彼はいつもの人斬り···いや、忍びのような身のこなしで、部屋を素早く出ていった。
「オッケー、これでなんとか納期に間に合ったわね。約束通り3日休みをやるから、清乃も羽根を伸ばすといいわ」
「ありがとう。滋子、大好き」
「おうよ」
中性的な清乃を見た目だけは小柄な少女風の滋子が抱きとめる絵面。
周りから見れば、逆じゃね?という立ち位置も、この二人にとってはこちらが正解だ。
儚げな見た目に反して男らしい滋子と、凛とした美少年枠の外見に反して妄想爆発している清乃。
「新たな扉が開きそうだな」
目の前に展開される百合GL(ガールズラブ)的な展開に、千絋は興味深げに鉛筆を取っていた。
「丁度いいじゃない。清乃をモデルにした新キャラの相手役、早くキャラデザしてくれてもいいのよ」
「えっ?それ見たい!」
サッと滋子から体を離し、千絋のスケッチブックを覗きこもうとする清乃はかなり距離が近い。
そのことを気にも止めずに受け入れている千絋も、普段の警戒具合からは考えられないほどリラックスしている様子だ。
それを見て満足気に笑っている滋子だったが、突然、思い立ったかのように
「そうだ、清乃。千絋さんは新キャラ開発以外仕事はないらしいよ。せっかくだから休みの3日間、一緒に遊んでもらいな」
と言った。
「何がせっかくだからよ。これ以上、滋子の我儘に千紘さんを巻き込むわけには···」
滋子に振り回されてきたと自覚のある清乃は、同じように巻き込まれた感満載の千紘に深い同情を覚えていた。
「原画」
「!?」
「千紘さんちには、お宝の山が」
「み、見たい」
しかし、三度の飯や睡眠よりも大好きで大切な狼犬《ウルハイ》の原画を見ることができるという誘惑に、清乃の硝子の理性は吹き飛んだ。
「よし、決まったぁ。千紘さん、最近、ハウスキーパーが辞めて困ったって言ってたわよね?この、清乃が立候補するって」
「え、ハウスキーパーは春日が···」
「辞·め·て困ってるのよね!」
「ああ」
千紘の言動から、春日が原因で千紘の家に出入りしていたハウスキーパーが、最近やめさせられたのだと、清乃は把握した。
「千紘さん、私、1からの創作はできませんが、料理や洗濯などの誰でもできる定型的な2次創作は得意なんです。次のハウスキーパーが見つかるまで、お手伝いさせてください!」
清乃は、千紘のプライベートゾーン、即ち狼犬《ウルハイ》の制作現場に立ち入ることのできるチャンスを逃すまい、と食い気味に千紘に詰め寄った。
「これまでのハウスキーパーが来ないのなら俺も困るな。申し訳ないが、頼んでもいいか?」
「喜んで!」
もはや、清乃の頭の中には狼犬《ウルハイ》の原画のことでいっぱいとなっていた。
清乃と千紘を乗せた馬車は、滋子が描いた轍《ワダチ》を踏んで進んでいく。
自覚しているのか、無自覚か。
二人の縁は今後も、複雑な様で実に単純に絡み合っていく···のかもしれない。