轍(わだち)〜その恋はお膳立てありき?
「パーティの衣装は心配しなくていい」
「どうせまた、バックに滋子がいるんでしょ?」
いつの間にか椅子の上で膝抱っこされている清乃は、諦めたようにため息をついた。
「今回は俺が選ぶよ。なんせ正式に清乃が俺のものになったんだからな」
「えっ?私は何もお返事してませんけど?」
いきなり自分のペースに持ち込もうとする千紘の早変わりがすごくて、清乃はちょっとついていけない。
「俺からのキスを嫌がらなかった、それが答えだろ?」
さっきまでの自信なさげな陰キャは何処へ行った?俺様復活??
と、清乃は大混乱だ。
「お前は嫌いなやつに抱きしめられたりキスをされたりして抵抗しないほど馬鹿ではない」
貶されているような気がしないでもないが、まあ、概ね合っている。
「俺のこと嫌いか?」
「嫌いか好きかでいったら好きですけど」
今の見た目は、俺様ナルシストイケメンでも、中身は尊敬する狼犬《ウルハイ》で敏腕プロデューサー千紘だ。
「俺はお前が欲しい」
テンプレで、イケメンで、庇護欲まで唆る一粒でニ度も三度も美味しい男。
何より、今まで、ここまで清乃を認めて求めてくれる男はいただろうか?
···いやいない(ちょっと寂しい)。
何より、今まで口説かれているかも?と思う場面でも、気付かぬフリをしてスルーすればなんとかなった。
だから今の今まで、自分が推しに弱いことに気付いていなかったのだ。
こうして、なんの対処法も持たずに千紘のテリトリーに迷い込んでしまったのは、清乃の落ち度と言えるだろう。
「私なんかのどこがいいんですか」
「全部」
キラキラと瞳を輝かせる千紘からは嘘は見て取れない。
「···」
だめだ、全肯定されて清乃は完全に落ちてしまった。
「嫌いなわけ、ないじゃないですか」
尊敬する狼犬《ウルハイ》が中の人で、初めから嫌いになれるはずはなかった。
この人が生み出す絵が好き。
それを生み出す繊細な手が好き。
陰キャであろうと俺様だろうと、自己肯定感が低かろうと、似非イケメンだろうと千紘は千紘で全部だ。
「好きの一択です」
「じゃあ、思いも通じたことだし、グイグイいかせてもらう」
そういった千紘は、目をギラつかせて狼犬に早変わりしようとしている。
始まりの合図は貪るようなキスだった。
それは獣のような激しさがありながらも、唯一の番を慈しむような優しさもあって···。
気がつけば、清乃は心も体も陥落されていた。
清乃が大切に(そこまでではないかも?)守ってきたもの、それら全てを明け渡した瞬間だった。
「どうせまた、バックに滋子がいるんでしょ?」
いつの間にか椅子の上で膝抱っこされている清乃は、諦めたようにため息をついた。
「今回は俺が選ぶよ。なんせ正式に清乃が俺のものになったんだからな」
「えっ?私は何もお返事してませんけど?」
いきなり自分のペースに持ち込もうとする千紘の早変わりがすごくて、清乃はちょっとついていけない。
「俺からのキスを嫌がらなかった、それが答えだろ?」
さっきまでの自信なさげな陰キャは何処へ行った?俺様復活??
と、清乃は大混乱だ。
「お前は嫌いなやつに抱きしめられたりキスをされたりして抵抗しないほど馬鹿ではない」
貶されているような気がしないでもないが、まあ、概ね合っている。
「俺のこと嫌いか?」
「嫌いか好きかでいったら好きですけど」
今の見た目は、俺様ナルシストイケメンでも、中身は尊敬する狼犬《ウルハイ》で敏腕プロデューサー千紘だ。
「俺はお前が欲しい」
テンプレで、イケメンで、庇護欲まで唆る一粒でニ度も三度も美味しい男。
何より、今まで、ここまで清乃を認めて求めてくれる男はいただろうか?
···いやいない(ちょっと寂しい)。
何より、今まで口説かれているかも?と思う場面でも、気付かぬフリをしてスルーすればなんとかなった。
だから今の今まで、自分が推しに弱いことに気付いていなかったのだ。
こうして、なんの対処法も持たずに千紘のテリトリーに迷い込んでしまったのは、清乃の落ち度と言えるだろう。
「私なんかのどこがいいんですか」
「全部」
キラキラと瞳を輝かせる千紘からは嘘は見て取れない。
「···」
だめだ、全肯定されて清乃は完全に落ちてしまった。
「嫌いなわけ、ないじゃないですか」
尊敬する狼犬《ウルハイ》が中の人で、初めから嫌いになれるはずはなかった。
この人が生み出す絵が好き。
それを生み出す繊細な手が好き。
陰キャであろうと俺様だろうと、自己肯定感が低かろうと、似非イケメンだろうと千紘は千紘で全部だ。
「好きの一択です」
「じゃあ、思いも通じたことだし、グイグイいかせてもらう」
そういった千紘は、目をギラつかせて狼犬に早変わりしようとしている。
始まりの合図は貪るようなキスだった。
それは獣のような激しさがありながらも、唯一の番を慈しむような優しさもあって···。
気がつけば、清乃は心も体も陥落されていた。
清乃が大切に(そこまでではないかも?)守ってきたもの、それら全てを明け渡した瞬間だった。