轍(わだち)〜その恋はお膳立てありき?
横槍
「あら、そんなに首まで締めつけたドレスを着せて、その下に何を隠しているのかしらね」

パーティ会場に入ってすぐに二人を迎い入れたのは、話題の人である滋子だった。

ゲームのお披露目と自社の2周年記念のパーティだ。

今日は滋子が主役と言って間違いない。

「清乃の肌を見ていいのは俺だけだ。不要な露出はいらない」

「あら、たった3日で随分滑舌が良くなったのね。自信も付いた様だし、今夜は期待しているわ」

清乃の腰を抱き寄せ、ドヤ顔をして独占欲を隠そうともしない千紘を軽くあしらう滋子は、この3日間に二人に起こった出来事を全てお見通しのようだ。

全く持って恥ずかしい。

「清乃。パーティ嫌いなのに参加してくれてありがとう。今夜も決して気持ちの良い展開にはならないと思うけど、千紘さんのそばにいて助けてあげてね」

いつになく真面目な顔をして口角を上げる滋子が怖い。

パーティにろくな思い出はないが、今夜も同じような何かが引き起こされるというのだろうか?

「大丈夫だ。清乃がそばにいてくれれば俺は負けない」

どこか、スポ根アニメのサブキャラが主人公に向けて発する言葉のようで笑いを誘うが、ここはパーティ会場、コメディに徹するわけにもいかない。

清乃はとりあえず何かが起こる前に腹ごしらえをしようと、料理の置かれているブースにさり気なく千紘を誘導する。  

波乱の幕開けは、もうそこまで来ていた。

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