轍(わだち)〜その恋はお膳立てありき?
「ご無沙汰しております」
「ふん、いつもより華やかにしているところは評価できるが、元来の陰気臭さは隠しきれておらん。所詮、偽物は偽物と言う事か」
視線を逸らさずに社長の暴言を受け止めている千紘だが、清乃の腰に回した腕はかすかに震えている。
滋子も社長を睨み返しているが何も言おうとはしない。
「あら、叔父様、今日の千紘さんなら多少なりとも見れなくはないわね。あの話、考えてあげなくもないわよ?イラスト?デザイナーだったかしら?あまり儲かるとは思えないけど、わたくしの実家が支援さえすれば問題はないもの」
「それは有り難い。絵なんていうくだらない低俗な仕事を続けることを、この東原志津香(ひがしはらしずか)さんは受け入れて下さると言うんだ。千紘もそんな女性に構っていないで、利益になる方を選ぶんだな」
あからさまに見下した態度の女性は、千紘よりも随分お姉さんに見える。
しかも厚化粧なのに、若作りであることを隠せていない。
そして傲慢社長、こいつは千紘の親戚か何かなのだろうか?
話の内容からは、この勘違いお嬢様との縁談を勧めているようにも取れる。
「ご遠慮させて頂き···」
「余計なお世話です」
恐怖を隠して威嚇しようとする狼犬を背に庇って、清乃は二人の前に出る。
「私の千紘さんを貶す権利も、彼の絵を汚す言動も、こちとら容認する余裕はないんで。覚悟してくださいね」
ドヤ顔をする清乃の口角は上がっているが、その顔は笑っていない。
ブラック清乃降臨である。
「あなた、誰に物を言っているのかおわかり?」
「あなたこそ、何様ですか?神絵師の千紘さんを侮辱するなんて万死に値する」
「たかが、イラストに神絵師とか笑っちゃうわ」
「ああん?じゃあ、あなたは描けるんですか?描けるんですね?なら見せて下さい。ほらここにスケッチブックがありますから」
清乃はチラリと壁際に控えていた春日に目配せをすると、頷いてスケッチブックと鉛筆を持参するよう促した。
春日は頷き、壁際に置いていたアタッシュケースからスケッチブックと鉛筆を取り出すと素早く清乃に差し出した。
やはり、できる秘書(隠密)である。
「ふん、いつもより華やかにしているところは評価できるが、元来の陰気臭さは隠しきれておらん。所詮、偽物は偽物と言う事か」
視線を逸らさずに社長の暴言を受け止めている千紘だが、清乃の腰に回した腕はかすかに震えている。
滋子も社長を睨み返しているが何も言おうとはしない。
「あら、叔父様、今日の千紘さんなら多少なりとも見れなくはないわね。あの話、考えてあげなくもないわよ?イラスト?デザイナーだったかしら?あまり儲かるとは思えないけど、わたくしの実家が支援さえすれば問題はないもの」
「それは有り難い。絵なんていうくだらない低俗な仕事を続けることを、この東原志津香(ひがしはらしずか)さんは受け入れて下さると言うんだ。千紘もそんな女性に構っていないで、利益になる方を選ぶんだな」
あからさまに見下した態度の女性は、千紘よりも随分お姉さんに見える。
しかも厚化粧なのに、若作りであることを隠せていない。
そして傲慢社長、こいつは千紘の親戚か何かなのだろうか?
話の内容からは、この勘違いお嬢様との縁談を勧めているようにも取れる。
「ご遠慮させて頂き···」
「余計なお世話です」
恐怖を隠して威嚇しようとする狼犬を背に庇って、清乃は二人の前に出る。
「私の千紘さんを貶す権利も、彼の絵を汚す言動も、こちとら容認する余裕はないんで。覚悟してくださいね」
ドヤ顔をする清乃の口角は上がっているが、その顔は笑っていない。
ブラック清乃降臨である。
「あなた、誰に物を言っているのかおわかり?」
「あなたこそ、何様ですか?神絵師の千紘さんを侮辱するなんて万死に値する」
「たかが、イラストに神絵師とか笑っちゃうわ」
「ああん?じゃあ、あなたは描けるんですか?描けるんですね?なら見せて下さい。ほらここにスケッチブックがありますから」
清乃はチラリと壁際に控えていた春日に目配せをすると、頷いてスケッチブックと鉛筆を持参するよう促した。
春日は頷き、壁際に置いていたアタッシュケースからスケッチブックと鉛筆を取り出すと素早く清乃に差し出した。
やはり、できる秘書(隠密)である。