轍(わだち)〜その恋はお膳立てありき?
「ええ?渡瀬社長の会社に最初に出資したのって、ちーちゃんだったの?」
「ああ、拓夢と吏音は大学の同級生だ。二人がIT関係の会社を立ち上げるにあたり、アイデアはあるものの資金繰りだけが問題だった。俺はイラストや動画が知名度を得た頃だったし、資産も潤沢に得ていたから、今後、奴らとの連携も視野に入れて出資を検討してはどうか、と春日父からの勧めもあったんだ」
人斬り春日が“吏音”なんていうお洒落な名前だった事にも驚くが、寡黙な彼が、実は千紘の義兄だったり、渡瀬の友人だったり、渡瀬ITソリューションズの創始者の一人だったり···。
清乃にとっては、周辺関係者各位の情報が多すぎて、若干混乱しつつあった。
「腹違いの妹である滋子社長と初めて会ったのは3年前だ。滋子社長は拓夢と吏音の大学の後輩。拓夢達が会社を立ち上げる際、拓夢のパートナーである滋子社長に、出資者となる俺の存在を隠し通すことは出来ないと踏んだんだろう。だから吏音も、俺という負の存在を滋子社長に明らかにせざるを得なかったのだと思う。会社を立ち上げて4年が経ってからの初対面だったから、滋子社長も心のなかでは葛藤していたんだと思う」
滋子は千紘の元カノではなく、腹違いの妹だった。
毒親の腐れ具合をわかっていたとはいえ、お互いの存在を知った時の、千紘と滋子の動揺は如何ばかりのものだったか···。
清乃はその時のことを想像して心が傷んだ。
「滋子社長も後妻の子で、腹違いの兄や映二社長から見下されて育ってきたようだった。だからこそ、俺に対しても何か感じるものがあったんだろうな。思い返せば、初めから偏見のない態度で接してくれていたように思う」
滋子らしい、と清乃は思った。
彼女は若干?腹黒ではあるが、底意地は悪くない。
愛人の子という存在に、思うことは色々とあっただろうが、千紘の絵の才能と将来性を見越して、彼女は千紘を受け入れる道を選んだ。
それがあったからこそ、清乃と千紘の現実(リアル)での出逢いに繋がり、こうして縁が繋がれているのだから。
滋子には感謝しかない···?
「滋子社長には実の母親という心の支えはいたんだ。だが、いち農家の息子である拓夢と縁を結ぶには後ろ盾として弱すぎる。あの血統のみを重視する映二社長だ。奴を丸め込むにはそれなりの力が必要。だから、滋子社長は俺の念願を叶えることで俺からの援助を得、拓夢の会社を大きくすることが全ての第一歩だと考えた。その方法こそが、清乃、君を滋子社長の会社に引き入れ俺の目の届くところに置くこと、だったんだ」
おっつ、あのイラストコミュニケーションサービスにリークされた狼犬《ウルハイ》関連情報と、コミケでの感動的な出逢い、その全てが今日に繋がる滋子の策略だったとは···。
敵、ではないが、天晴としか言えないでござる。
「しかも、最近、映二社長は滋子社長だけでなく、俺にも会社の利益となる相手を見繕って結婚させようと画策を始めていた。だからこそこのタイミングで、清乃と俺をくっつけて、自分達もおこぼれに預かる算段だったんだろうな」
「ああ、拓夢と吏音は大学の同級生だ。二人がIT関係の会社を立ち上げるにあたり、アイデアはあるものの資金繰りだけが問題だった。俺はイラストや動画が知名度を得た頃だったし、資産も潤沢に得ていたから、今後、奴らとの連携も視野に入れて出資を検討してはどうか、と春日父からの勧めもあったんだ」
人斬り春日が“吏音”なんていうお洒落な名前だった事にも驚くが、寡黙な彼が、実は千紘の義兄だったり、渡瀬の友人だったり、渡瀬ITソリューションズの創始者の一人だったり···。
清乃にとっては、周辺関係者各位の情報が多すぎて、若干混乱しつつあった。
「腹違いの妹である滋子社長と初めて会ったのは3年前だ。滋子社長は拓夢と吏音の大学の後輩。拓夢達が会社を立ち上げる際、拓夢のパートナーである滋子社長に、出資者となる俺の存在を隠し通すことは出来ないと踏んだんだろう。だから吏音も、俺という負の存在を滋子社長に明らかにせざるを得なかったのだと思う。会社を立ち上げて4年が経ってからの初対面だったから、滋子社長も心のなかでは葛藤していたんだと思う」
滋子は千紘の元カノではなく、腹違いの妹だった。
毒親の腐れ具合をわかっていたとはいえ、お互いの存在を知った時の、千紘と滋子の動揺は如何ばかりのものだったか···。
清乃はその時のことを想像して心が傷んだ。
「滋子社長も後妻の子で、腹違いの兄や映二社長から見下されて育ってきたようだった。だからこそ、俺に対しても何か感じるものがあったんだろうな。思い返せば、初めから偏見のない態度で接してくれていたように思う」
滋子らしい、と清乃は思った。
彼女は若干?腹黒ではあるが、底意地は悪くない。
愛人の子という存在に、思うことは色々とあっただろうが、千紘の絵の才能と将来性を見越して、彼女は千紘を受け入れる道を選んだ。
それがあったからこそ、清乃と千紘の現実(リアル)での出逢いに繋がり、こうして縁が繋がれているのだから。
滋子には感謝しかない···?
「滋子社長には実の母親という心の支えはいたんだ。だが、いち農家の息子である拓夢と縁を結ぶには後ろ盾として弱すぎる。あの血統のみを重視する映二社長だ。奴を丸め込むにはそれなりの力が必要。だから、滋子社長は俺の念願を叶えることで俺からの援助を得、拓夢の会社を大きくすることが全ての第一歩だと考えた。その方法こそが、清乃、君を滋子社長の会社に引き入れ俺の目の届くところに置くこと、だったんだ」
おっつ、あのイラストコミュニケーションサービスにリークされた狼犬《ウルハイ》関連情報と、コミケでの感動的な出逢い、その全てが今日に繋がる滋子の策略だったとは···。
敵、ではないが、天晴としか言えないでござる。
「しかも、最近、映二社長は滋子社長だけでなく、俺にも会社の利益となる相手を見繕って結婚させようと画策を始めていた。だからこそこのタイミングで、清乃と俺をくっつけて、自分達もおこぼれに預かる算段だったんだろうな」