轍(わだち)〜その恋はお膳立てありき?
「な、何だと?今日のこのイベントそのものが偽物だったというのか?!そんなことのために会社の大切な経費を無駄にするなど、言語道断だろう」
「お言葉ですが、本来のイベントで先程のような暴挙を許してしまったとしたら、どれ程の損害を出すことになったのか、映二社長はおわかりにならないのですか?」
「もちろんわかっとるから、これを機会に儂らが乗っ取ろ···いや、支援してやろうと駆けつけたのだろう」
“今、乗っ取る、って言おうとしたよね?”
清乃は、いくら彼が生物学上の滋子と千紘の父親とはいえ、あまりの毒親っぷりに思わず拳を上げそうになっていた。
「あなたの商才のなさについては我々も十分把握しているつもりです。たとえ自社が潰れそうになったとしても絶対にあなたにだけは頼らない。資金繰りがままならなくなって、遂には、千紘がオランダの実母に送金している月々の生活費にすら手を付け始めたあなただ。とても信用に足る人物だとは思えない」
その事実を千紘は知らなかったのだろう。
開かれた瞳孔がそのことを如実に物語っていた。
清乃は黙って千紘の左手を撫でるが、胸の内には、映二社長に対する抑えられない怒りが溢れて荒れ狂いそうになっていた。
「今まで何不自由なく暮らせるように援助して来たんだ。困ったときに助け合うのがパートナーいうものだろう。そもそも働きもしないアンナの金は、元々は俺のものだ。何が悪い」
反省もせず、完全に開き直る映二社長は、典型的なモラハラ男の代表格と言えるだろう。
誰がなんと言って聞かせても、一生聞く耳は持たないに違いない。
こんな男の側で千紘が幼少期から苦しんできたかと思うと、清乃は心が傷んだ。
「あなたがアンナさんをパートナーとして尊重してきたことが一度でもあったのですか?独身だと嘘をつき子を孕ませ、挙句の果てに絶望している彼女をマンションに一人閉じ込め監禁し続けた。これが虐待と言わずして何と言うのか」
絶妙なタイミングで、ホールのドアを開け放って登場したのは、滋子の母親でこのホテルのオーナー、ラスボスこと村瀬美代子。
そして後ろに隠れるもう一人の女性。
それは、オランダにいるはずの千紘の母親、鷹司アンナ、その人であった。
「お言葉ですが、本来のイベントで先程のような暴挙を許してしまったとしたら、どれ程の損害を出すことになったのか、映二社長はおわかりにならないのですか?」
「もちろんわかっとるから、これを機会に儂らが乗っ取ろ···いや、支援してやろうと駆けつけたのだろう」
“今、乗っ取る、って言おうとしたよね?”
清乃は、いくら彼が生物学上の滋子と千紘の父親とはいえ、あまりの毒親っぷりに思わず拳を上げそうになっていた。
「あなたの商才のなさについては我々も十分把握しているつもりです。たとえ自社が潰れそうになったとしても絶対にあなたにだけは頼らない。資金繰りがままならなくなって、遂には、千紘がオランダの実母に送金している月々の生活費にすら手を付け始めたあなただ。とても信用に足る人物だとは思えない」
その事実を千紘は知らなかったのだろう。
開かれた瞳孔がそのことを如実に物語っていた。
清乃は黙って千紘の左手を撫でるが、胸の内には、映二社長に対する抑えられない怒りが溢れて荒れ狂いそうになっていた。
「今まで何不自由なく暮らせるように援助して来たんだ。困ったときに助け合うのがパートナーいうものだろう。そもそも働きもしないアンナの金は、元々は俺のものだ。何が悪い」
反省もせず、完全に開き直る映二社長は、典型的なモラハラ男の代表格と言えるだろう。
誰がなんと言って聞かせても、一生聞く耳は持たないに違いない。
こんな男の側で千紘が幼少期から苦しんできたかと思うと、清乃は心が傷んだ。
「あなたがアンナさんをパートナーとして尊重してきたことが一度でもあったのですか?独身だと嘘をつき子を孕ませ、挙句の果てに絶望している彼女をマンションに一人閉じ込め監禁し続けた。これが虐待と言わずして何と言うのか」
絶妙なタイミングで、ホールのドアを開け放って登場したのは、滋子の母親でこのホテルのオーナー、ラスボスこと村瀬美代子。
そして後ろに隠れるもう一人の女性。
それは、オランダにいるはずの千紘の母親、鷹司アンナ、その人であった。