素直になれない私たち

その後数人の女の子に見つかってしまったらしく少し騒がしくなって
しまったけれど、しばらくすると人影もなくなり、私たちはそのまま
一緒に帰った。


「試合が終わったとき、ちょっと泣いた?」


「ん?泣いてないよ」


俺まわりの奴ら慰めてたじゃん、見てなかった?とうそぶく翔平の顔を
見上げながら『ふーん、そっか』といって笑みを浮かべた私に気づくと、
翔平は観念したようにいった。


「嘘。終わった瞬間、ちょっと涙出た」


そういったのと同時に、翔平の右手が私の左手をとり、いわゆる『恋人
繋ぎ』をした。顔を上げて翔平の表情を確認したかったけど、それ以上に
自分の顔を見られるのが恥ずかしくて私はそのまま翔平の右手を握り返す
のがやっとだった。


私たちはそのままゆっくりと駅まで歩いた。

間近で見てきた翔平の掌は、想像以上にゴツゴツしていて大きかった。
いや、大きいのは比べたことがあるからわかってはいたけれど、手を繋いだ
時の安心感とか、男っぽさとか、今初めて気づいた感情を自分の中でどう
昇華させたらいいのか、たぶんこの時は戸惑いのほうが大きかったのだと
思う。


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