素直になれない私たち

「ねえあかりちゃん、ちょっといい?」


体育の授業が終わり、着替えている途中で声を掛けてきたのは2年に
なって初めて同じクラスになったまっつんこと松岡優希だ。


「なに、どうしたのまっつん」


「水上ってさ、中3の時の彼女ってもう別れたの?」


「えっアイツ彼女いたの?」


いつのまにか隣りにいた晴夏も当たり前のように会話に入ってくる。
中3の時の彼女?いや私も初耳だけど、もしかしてあの後翔平は誰かと
付き合っていたのだろうか。


「ごめん、彼女いたのかどうかもわかんないや」


クラス違ったし、と聞かれてもいないのに言い訳のように呟く。
するとまっつんはそっか、といいつつ思いがけないことを口にした。


「私北中出身なんだけどさ、中3の時うちの中学の野球部が準決勝で
西中と当たって、その時私現地に見に行ってたんだよね。あの時ってさ、
西中も確か3年生が応援に来てなかった?」


まっつんが目をキラキラと輝かせながら尋ねる。
彼女って...まさかね、と思いながらまっつんに言葉を返す。


「あーうん、そうだね、行ってた、かな、確か」


やっぱりそうだったんだ、じゃああの時すれ違ってたかもねー、なんて
ところで話が終わるはずもなく、まっつんの話は容赦なく本題へと突き
進んでゆく。


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