素直になれない私たち

「で、彼女ってなんの話?」


晴夏の問いかけにまっつんの目がまたキラキラし始めた。


「あっそうそう。でね、私たちが野球部の人たちを取り囲んでる時に
水上だけ誰かを探してるみたいな様子だったのね。で、しばらくしたら
誰かからライン届いたみたいで、水上がそれを見てすぐ球場の外に出て
行ったの。私水上目当てだったからずっと見てたんだけど、そこに西中の
制服着た子が待ってて」


「待ってて?」


目の輝きっぷりは晴夏もまっつんに負けていない。


「ハグしてた」


「あの翔平が?」


「うん。この目で見た。まあ遠目だったから女の子の顔とかは見えな
かったけど。あれは絶対彼女でしょ」


...それは私です(小声)


思わぬところに目撃者がいたものだ。
私だと気づかれていないのがせめてもの救いといったところだけど、
まさかあの場所にいた人と同じクラスになっていたなんて。


「でも南が翔平は彼女いないっていってたから、その子とは別れた
ってことじゃないの」


...そもそも始まる前に終わってしまったので彼女ではないんですけど
ね。ノーカウントです。


じゃあまだチャンスは僅かに残ってるかな、もう一度狙ってみようかな、
というまっつんになぜか頑張ってね、とはいえず、適当に笑って表情を
ごまかしながら晴夏と一緒に更衣室を後にした。



このもやもやする気持ちはなんだろう。



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