素直になれない私たち
「あかりちゃん!」
晴夏がこの部屋に慌てて入ってきたとき、私はまだ押し倒されている状態
だったので、晴夏はすぐに私からこの人を引き剥がした。
「ちょっと先輩、何やってんの!」
晴夏の後に入ってきたのはさっき私をこの部屋まで連れてきたもう一人の
上級生だ。私は晴夏の後ろに隠れつつ、この状況について説明した。
「なんか、人違いだったみたい」
「は?」
「いやだからさ、谷口のファンで早く会いたいっていってる子が来てる
から、じゃあ呼んで来ようぜってことになって、俺が間違えてA組の部屋に
入ったら、たまたま同じ名前の三浦さんがいたってわけよ」
「だから連れてったってこと?」
1年の晴夏が完全に2年生の男子を圧倒している。
ちなみにこの人はジュンキ先輩というらしい。
「この子連れてった後にB組の三浦リコちゃんって子がうちのクラスの
部屋尋ねてきてアレ?ってなってさ、じゃああの子は?と思って戻る
途中で晴夏と会って、今に至るんだよ」
「もー、私の友達に変なことしないでよね、谷口先輩」
さっき話してた中学からの先輩ってこの人なの、と晴夏が気まずそうに
いった。あー、来るもの拒まずの人、と思わず口から出てしまい、それが
谷口先輩に聞こえてしまった。私はすかさずまた晴夏の後ろに隠れた。
「晴夏、俺のことどう説明してんだよ。誤解されてんじゃん」
だいたい合ってるでしょ、と晴夏に一蹴されたのになぜか谷口先輩は
楽しそうにしている。
「三浦あかりちゃん、また今度遊ぼうね」
そういって谷口先輩はジュンキ先輩と一緒に自分たちのクラスの部屋に
戻っていった。ジュンキ先輩は何度も両手を合わせてゴメン、といって
出て行った。
嵐のような数十分間だった。