素直になれない私たち
経験値
ゴールデンウィーク明け、月曜日の昼休み。
相変わらずだらだらと時間をつぶしながら、5時間目が始まる10分くらい
前に晴夏と一緒に教室に戻ると、入れ違いで中から出てきた翔平に腕を
つかまれた。
「今戻らないほうがいいかも」
「え、なんで...?」
翔平が何かいおうとしたその時、教室の中から南が私たちに声をかけて
きた。
「おーあかり、晴夏もちょっとこっち来い」
え、何事、と晴夏と顔を見合わせながら訝しげに南が手招きをするほう
へと向かう。翔平がご愁傷様、と小さく呟いてそそくさと立ち去ったのが
気になって仕方ない。
「これを見たまえ」
そういって南が私たちに雑誌のとあるページを開いて見せた。
『FINEST BOYS』、おしゃれ男子御用達の雑誌だ。
「『ファーストキスの平均年齢は16歳』...これがどうかしたの」
興味なさそうに晴夏が呟く。
イヤな予感がするのは私だけだろうか。
「俺は来月17歳になります」
「うん、知ってる」
「あっそうなんだ、おめでと」
そうじゃないんだよ、と南が力説する。
「だから、もうすぐ17歳になっちゃうんだよ、平均年齢過ぎちゃうんだよ!」
「あ、そういうことね」
要するに、まだ南は誰ともキスしたことがなくて焦り始めている、ということ
らしい。