素直になれない私たち
数日後、クラスの誰かが親睦会をしよう、といいだした。
晴夏や南が行くというので私も何となく参加することにした。
放課後に駅前のカラオケ店で集合ということになり、晴夏と一緒に
教室を出ると玄関で南と翔平に出くわし、そのまま合流することに
なった。歩きながら晴夏と南がだんだん何を歌うかで盛り上がり始め、
気づくと私と翔平がおいて行かれる形で並んで歩くことになって
しまった。
「あいつら、仲いいな」
同じクラスになって初めて、翔平が私に話しかけてきた。
「あの二人も同中だって」
そういって翔平の顔を見上げた時に、明らかに顔の位置が前より
高いところにあることに気づいた。
「なんか…大きくなったね」
「お前は親戚のおばちゃんか」
そういう時は『背が伸びたね』じゃないの、と翔平が笑う。
くったくのない笑顔も変わっていなくて、少しずつ私の得体の
知れない緊張感も解れていく。私は同じことなんだからいいじゃん、
といって軽く翔平の背中を叩いた。
「あの頃から10センチ伸びたよ」
「じゃあ今は179もあるの?」
うん、と翔平が頷く。私があの頃から2センチしか伸びてないから、
この身長差もまあ当然か。そうか、始業式の日に少し痩せたと感じた
のは、痩せたんじゃなくて背が伸びてしゅっとしたんだ。
この数日は並んで立ったり歩くことがなかったからわからなかった。