素直になれない私たち

結局、晴夏からの尋問を上手くかわすことはできなかった。

当時好きだった人が他の女の子にせまられてキスされているところを
見てしまったこと、それがショックでそれ以降その人との連絡を絶った
こと、そこまで話した時点で晴夏が不満げにいった。


「なんでその時彼とちゃんと話しなかったの?あかりから見ても彼の
意思がなかったなら完全に事故じゃん。私ならまず先にその女をしば
くわ」


「まあ今思えばそうなんだけどね、あの頃は好きな人が他の女の子に
キスされてる場面ってけっこう強烈に残っちゃってさ、どうしてって
いうよりはもうこの場から逃げたいって気持ちのほうが勝っちゃった
んだよね」


私がいたらそこで終わるようなことにはしなかったのに、といって
くれる晴夏にありがとう、と返しつつ、恋愛初心者には難しい問題
だったよ、と私はぼやいた。
あの頃晴夏みたいな友達が側にいたら、何か違ってたのかな。


「ところで、その彼は今どうしてるの」


「え?」


あー、どうしてるかなー。元気にしてるといいな、うん。
そう返した私の目は果たして泳いでいたでしょうか、ねえ神様。



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