素直になれない私たち

カラオケ店に着いて、先にお手洗いに行ってから遅れて部屋に入ると、
何となく翔平と南のまわりが女子多めなことに気づいた。

あかりこっち、と手招きする晴夏の隣りに座ると早速晴夏が話し始める。


「あっという間にあんな感じよ」


女子に取り囲まれてまんざらでもなさそうな南とあまり表情を変えない
翔平を見て、中学の頃を思い出した。
あの頃も、野球部の練習を遠巻きに見ている翔平の隠れファンの存在が
あった。でも今は背も伸びて男っぽくなって、わかりやすくモテるように
なったようだ。

彼女でもないのに少しイラっとしている自分に気づいて、へーそうなんだ、
と無関心を装って歌本に手を伸ばした。


「あかり、谷口先輩たちのクラスも来てた。後で歌いに来いって」


3年生の谷口先輩はちょっとしたことがきっかけで1年の時から私たちを
何かと構ってくれる。程よい軽さといい加減さを持ちながらもなぜか
女の子からは憎まれない、まあ要するによくモテる人だ。友達も多く、
谷口先輩のおかげで他の先輩たちからもかわいがってもらっている。

自分のクラスの部屋で何曲か歌った後、私たちは3年生がいる部屋にも
出向いて先輩たちと合流したり、あっという間に時間は過ぎてクラスの
親睦会は終了した。


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