素直になれない私たち

ずいぶん派手にやったわねー、と保健の先生が声を上げる。


「捻挫だね、紹介するからちゃんと病院で診てもらってね」


そういうと、先生は病院の名前と場所を書いたメモを渡してくれた。


「病院てどこ?」


「隣りの駅の近くだって、今日お休みみたいだから明日行ってくる」


ふーん、と頷いて翔平は私が躓かないようにゆっくりと歩いてくれる。
翔平の腕につかまりながら歩いて教室の前に辿りついたのは4時間目が
始まる直前だった。私たちの姿が視界に入ると教室の中が一瞬騒めいて、
でも翔平に支えられて左足を引きずって歩く私を見てすぐに晴夏と近くに
いた女の子たちが駆け寄ってきた。


「いい仕事してんじゃん」


そういって晴夏にばしっと背中を叩かれ、イテ、と翔平が思わずよろける。


「転んだのが他の子でも、同じことしてた?」


私に聞こえないように晴夏がそういって翔平の顔を覗き込むと、翔平は
一瞬固まり、聞こえないふりをして視線を逸らした(晴夏による後日談)。

2人だけジャージ姿のまま4時間目の授業を受けて、昼休みにやっと制服に
着替えて教室に戻った。右膝にテープで貼ったガーゼを見られてみんなに
子供みたいだと笑われながら、私はなんとか放課後まで持ちこたえた。


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