素直になれない私たち
学校に着いて翔平と一緒に教室に入ると、先に来ていた晴夏がすぐに
寄ってきた。
「もしかして、翔平と一緒に来たの?」
小声の晴夏に呼応するように私も小さく頷くと、晴夏はふーん、そう
なんだ、といって意味ありげな笑みを浮かべていた。
「やればできるじゃん」
「ん、なんかいった?」
「あーなんでもない」
そういうと晴夏は斜め後ろに目線を向けた。渋い顔をしている翔平を
見て、翔平に向けた言葉がちゃんと本人に届いていたことを確認し、
ニヤリと笑った。
もちろん、そんな2人の様子など私は知る由もない。
そして、その頃3年生の教室でも私たちのことが話題になっていた。
少し不機嫌そうに腕を組んで座っている谷口先輩のそばで、純希先輩と
女子の先輩が谷口先輩に聞こえるように話をしていた。
「昨日谷口にあかりを持ってかれたの気に入らなかったんだろうな」
「蓮と水上くんに奪い合われるって、あかりちゃん前世でどんな徳を
積んできたんだろ」
「まあ、向こうも本気ってことだよ。なあ谷口」
「何かに思い悩む蓮っていうのも、なんか新鮮でいいかも」
「勝手なことばっかりいってんじゃねーよ」
自分をネタに盛り上がる2人を制すると、谷口先輩は『ライバルかよ』
と周りに聞こえないように呟いた。