素直になれない私たち
「ねえ、南はいつ頃から晴夏と仲良くなったの」
「なに突然」
南が驚くのも無理はない。放課後、日直で黒板を拭いている南の背後から
近づいて声を掛けたからだ。
「中2から2年間同クラだった」
「その頃から晴夏可愛かった?」
何を聞くんだ、という顔をしながらもまあ目立ってたよ、という南に私は
こう続けた。
「ストーカーみたいなのはいなかった?中3のときとか」
南の顔色が変わる。
「晴夏に何かあった?」
私は今日のお昼に晴夏から聞いたことを南に話した。たいしたことないって
いってるけどきっとそんなことないと思う。だから今日はみんなで一緒に
帰ろうよ、そういうと南が私の背後に目線を泳がせる。
「そりゃもちろんいいけど...晴夏は?」
え、といって私が後ろを振り向くと晴夏の姿が見当たらない。
晴夏ちゃんならさっき帰ったよ、と近くにいた友達にいわれ、私は動揺を
隠せずにいた。
「嘘、一緒にみんなで帰ろうっていったのに」
そういって窓の外に目を向けると晴夏の後ろ姿が見えて、私は窓から
めったに出さない大きな声で晴夏の名前を呼んだ。振り返った晴夏は
心配しないで、といわんばかりの笑顔で大きく手を振り返した。
「これ終わったら俺晴夏追いかけるから、あかりはもう心配すんな」
そういって南は日誌を適当に書きなぐって終わらせ、晴夏の姿を
確認しようと窓の外に視線を向けた。そして次の瞬間、南は日誌を
私に預けると『アイツか』と呟いて教室を飛び出して行った。