素直になれない私たち

「あかり、南たちが何か食べに行こーって」


南「たち」とは南と翔平のことだ。親睦会が終わって名残惜しそうに
している女子たちの視線が痛いと感じるのはたぶん気のせいじゃない。
そんなことを全く気にしていない晴夏が私の背中を押して前へ進む。

私たち4人は駅の近くにあるファミレスに入った。


「三浦の連絡先教えてよ」


南の一言がきっかけとなって私たち4人は連絡先を交換した。

もちろん、私と翔平も。

たぶん普通にできたと思う。始業式の日はとっさに同中だけど知り合い
ではなかった、という設定にしてしまったけれど、今のところは新しい
クラスメイトとして振舞うことができている、はずだ。

翔平がちょっとトイレ、といって席を立つと、南が私と晴夏を手招きして
小声で話し始めた。


「アイツさ、あれだけ今日女子に囲まれといて、誰にも連絡先教えてない
んだぜ。仲いい友達にしか教えてないから、とかいってさ、かなり食い
下がってた女もいたけどダメだった」


「えー、じゃあもしかして今のも本当はイヤだったのかな」


「お前らはさすがにトモダチ認定されたんじゃね?だってイヤなら
ここに一緒に来ないだろ」


晴夏がちょっと考えて確かに、と納得する。


「彼女いるからとかとかじゃないの?」


「それが高校入ってまだ彼女いないって」


「へーそうなんだ、じゃあこれから争奪戦が始まるってことね。面白そう」


晴夏の目がいたずらっ子のようにキラキラと輝いている。
俺もいるんだけどね、少しいじけた表情を見せながら南はドリンクを
取りに席を立ち、晴夏も私も、と南の後を追うように席を離れた。


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