素直になれない私たち

「え、ちょっと南」


アイツって誰?渡された日誌を抱えたままもう一度窓の外を見ると、
そこには立ち止まっている晴夏とその先に見たことのない男が一人
立っているのが見えた。
慌てて南の後を追いかけようとするけどまだ私の足は走れるようには
なっていない。とりあえず日誌を教卓の上に置いて、早足で教室を
出ようとしたとき、すれ違いざまに誰かに腕をつかまれた。


「どうした?」


翔平だ。私の表情を見て何かがあったことをすぐに察し、落ち着け、
といわんばかりに私の腕をつかんでいる。


「晴夏が、ストーカーにつきまとわれてるかもしれなくて、あそこに」


指差したその先には後ろ姿の晴夏と、少しずつ距離をつめているように
見える男の姿。


「南は?」


「さっき晴夏を追いかけて出て行った」


「わかった。俺もすぐ行くから、お前は無理するな」


走ろうとしたらまたコケるぞ、といって翔平は私の背中をポンと軽く
叩き、教室を出て行った。


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