素直になれない私たち

私が学校の外に出るのに手間取っている頃、その男は晴夏に詰め寄って
いた。


「なんでスルーしてんの?途中から既読にもなんねーし」


「フツーに迷惑だから。こっちは学校に来てんの、授業中ラインとか
しないし。ていうか制服で学校がどこか突き止めるとかマジでキモい
からホントやめて」


そういって通り過ぎようとする晴夏の腕を、その男は思い切り掴んだ。
晴夏が痛みで思わず顔を歪めたその瞬間、今度は誰か別の人物が間に
入ってその男から晴夏を引き剥がした。


「南...?」


大丈夫か、と声を掛けられ晴夏は男に掴まれて痛みが残る右腕を押さえ
ながら頷いた。突然現れた南の顔を見てその男の表情が変わる。


「...またお前か」


また(・・)
どうして南がコイツのこと知ってるの...?
晴夏は疑問に思いながらも、2人から離れて後ずさりした。


南が男と揉み合っているところに翔平が駆けつけて、しばらくすると
さらに騒動に気づいた先生が『うちの生徒に何してる!』といって駆け
寄ってきた。予想以上に騒ぎが大きくなってしまい、その男は舌打ちを
して足早に走り去った。


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