素直になれない私たち
「私ね、中2の時から3年の先輩とよく遊んでもらってて。男子も女子も
目立つ人たちでさ、可愛がってもらってたのね。そのうちの何人かが
SNSやってて、それに何度か一緒に写ったりしてたんだけど、それを
見た人から変なコメントが付いたりしてさ。あ、ちなみに私はSNSとか
やってないからそんなことになってるって知らなくて、のんきに遊んで
たんだけどさ」
「先輩ってもしかして、谷口先輩とか純希先輩のこと?」
「そうそう、あの人たち中学の頃から目立ってたから、他校にもファン
とかいてさ、そんな彼らと一緒に遊んでるの見て『なにあの女』みたいな
感じ?」
女の嫉妬は怖いというけれど、まさか14歳でそれを体感してしまうとは。
やっぱり可愛いって罪だ。
「先輩たちが先にSNS上の不穏なコメントに気づいて、私が写ってる
写真を削除して、私には何もいわずにさりげなく一緒に帰ったりとか
してくれてさ、結局私は何も知らないまま守ってもらってたんだよね」
まさに今回の南と同じだ。晴夏の周りにいたのがみんな優しい人たちで
本当によかった、と思った。ところで、と私は話を続けた。
「そのことはいつ知ったの?」
いつになく神妙な表情の晴夏に問いかけると、晴夏は少し黙って大きく
一呼吸おいた。
「その後彼氏ができて、その人の友達から聞いた」
「彼氏って...?」
「私、純希先輩と付き合ってた」
「え!」
私の目がこれ以上ないくらいに大きく見開いたのはいうまでもない。