素直になれない私たち
「私の推測が当たってるか確認してもいい?」
「...はい」
「中3の大失恋もファーストキスの相手も、翔平なんでしょ」
「...はい」
さっきまでお茶会に参加していたはずが、今はまるで取り調べを受けて
いる容疑者の気分だ。
「どうして『ちょっと知ってる程度』みたいなふりしたの?」
「あの時は...そういっておけば翔平と多少よそよそしくても変に思われ
ないかな、と思って」
「ほら、それも」
「え?」
「ホントは下の名前で呼んでたんでしょ」
体育座りをしてすでに縮こまっていた私は、晴夏の前で無意識に翔平と
呼んでしまったことに気づいて、下を向いて顔を膝に埋めた。
「いつから気づいてたの?」
顔を膝に埋めたままの状態で私が尋ねる。南がファーストキス云々で
拗らせてた頃に4人でファミレス行ったじゃん、と晴夏が続けた。
「翔平があかりにアイスコーヒー取ってきたとき、ミルク2個持って
きたの見て『何であかりの好み知ってるんだろう』って思ったのが
最初。で、その後あかりが翔平のサラダにトマト入れなかったのも
最初は入れ忘れたのかと思ったけど、あれも翔平がトマト嫌いなの
わかってたから入れなかったんでしょ」
そこからいろいろ推理して今に至る、とドヤ顔の晴夏。
本当は私の母や南からの証言(!)が決め手になったはずなんだけど、
そこはあえて私には伝えず、彼らの名誉を守ることを選んだようだ。