素直になれない私たち

「で、あかりはこれからどうしたいの」


「どうって、別になにも...現状維持?」


そう答えると、晴夏の表情が険しくなった。


「あのさ、翔平のこと苗字で呼んだり知り合いじゃないふりしたり
してる時点で、じゅうぶん翔平のことまだ意識してるってことなの。
もう気にしてないなら普通に話せるでしょ」


ぐうの音も出ない。いやでもあんな終わり方した相手とあー久しぶり、
とか明るく挨拶なんてできないって。だいたい晴夏は純希先輩と再会
したときどうだったのよ、なんて聞いた私がバカだった。


「私たちは始まりも終わりもちゃんと言葉で伝えたし、別になんの
わだかまりもないもん。今の私たち見ればわかるでしょ」


純希先輩とはむしろ今くらいの距離感がちょうどいいっぽいわ、と笑う
晴夏を羨ましく思う。そう、私と翔平はお互いに気持ちを言葉で伝える
ことのないまま壊れてしまったのだ。そして今、私たちは2年前のこと
には触れることなく物理的な距離を少しずつ縮めようとしている。
そしてそれが正しくないことも、たぶん私たちは気づいている。


「『どうしてあの子とキスしてたの?』なんて今更聞けないよ」


「でもそれが2年間ずっと翔平に聞きたかったことなんでしょ」


あんなに泣いて、スマホも変えて、無理やり断ち切った翔平との関係。
少しだけ大人になった今なら、冷静に話せるだろうか。


「ちなみに、翔平もいいたいことは山ほどあると思うよー」


恨み言は聞きたくないよー、と私は耳を塞いだ。


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