素直になれない私たち

そして迎えた体育祭当日。


「こんなに天気良くなるなんて宇田さんいってなかったよ」


「まあ雨が降るよりはましでしょ、宇田さんを責めるのはどうなの」


宇田さんとは朝の情報番組に出ている気象予報士さんのことだ。
私は宇田さんが『今日は終日曇りでしょう』といっていたのでそれを信じて
ジャージの上着を競技場内のロッカーに入れてきてしまった。なのに11時を
過ぎる頃には雲一つない快晴となり、今半袖のTシャツを着ている私はジリ
ジリと確実に日焼けし始めている。肌が人より少し白いせいか、日に焼けて
も黒くならずに赤くなってしまうのだ。


「見て、もうこんなに日焼けしちゃってる。高跳び程度の運動量でこれよ」


晴夏がそういってTシャツの袖を少し捲ると、うっすら袖と肌の境い目に
線ができていた。私が座っているスタンド席は、午前中は背後の木々から
伸びる日陰に覆われていたが、日が高くなるにつれてその陰が短くなって
きており、新たな日陰を探すか上着を着るかの2択を迫られている。


「それにしても、適当に参加して2位とはさすがですね」


運動部でもない晴夏が、しれっと1メートル25センチという高さのバーを
「見よう見まねでやってみた」という背面飛びで見事にクリアし、陸上部の
本職女子に続く2位に入ってクールに戻ってきた。私も本気でアイス狙ってる
からね、という表情は自信に満ちていて、とても頼もしい。


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