素直になれない私たち

2人でスタンドに戻ると、リレーメンバーがすでにトラックに出ているのが
見えて、私はすぐに晴夏の隣りに、翔平は南がいる1段上の席に座った。


「ずいぶん早かったね、あー翔平も一緒だったんだ。お疲れ、なかなか
やるじゃん」


ん、何が?と翔平のほうを振り返ると、翔平は別に、と涼しい顔をして
立っている。きょろきょろしている私に晴夏が教えてくれた。


「聞いてないの?幅跳び1位かっさらってきたんだよ」


「えっ、何でいわないの」


「まあまあっていったじゃん」


「学年1位ってまあまあじゃないでしょ、すごいじゃん」


つっかかりながらもおめでと、と小声で伝えると、翔平も小さく頷いて
少し笑ったように見えた。あらためて前を向き直し、晴夏に話しかける。


「予選は大丈夫だよね、うちのクラス」


「それ、翔平のジャージでしょ」


「...」


ジャージを取りに行こうとした私と置いてこようと思ってた翔平との間で
利害関係が一致しただけです、といっても晴夏の何かを察したかのような
表情は変わらない。まわりの女子たちに気づかれるといろいろ面倒だから
気をつけなよ、といわれるも時すでに遅し。明らかに大きなジャージを着た
私とTシャツ姿の翔平を見比べている女子たちの視線が突き刺さってる、
気がする。

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