素直になれない私たち

そうこうしているうちにパーン!とスタートの合図が鳴った。


男子のリレーは学年ごとに予選を行い、各学年から2チームずつ決勝に
出場する。陸上部員は1名だけであればメンバー入りすることができ、
うちのクラスには短距離でインターハイを目指す近ちゃんこと近藤くんが
アンカーに控えている。内緒だけど優勝候補だ。

運動部と陸上部員で構成された我がD組はあっという間にバトンをアンカー
まで進め、見事に予選を1位で通過した。スタンドで応援していたみんなで
喜び合う中、クラス委員の高木くんが急いで走り終わったリレーメンバーの
もとに駆け付け、アンカーで1番にゴールテープを切った近ちゃんに声を
掛けている。何やら深刻そうに話し込み、ぽんぽんと2回近ちゃんの肩を
叩くと高木くんはスタンド席の私たちのところに戻ってきた。


「近ちゃんどうかしたの?」


みんな心配な様子で高木くんに声を掛ける。こちらから見ている限りでは
近ちゃんは普通に歩いているように見えるけど、もしかしてどこか痛めた
のだろうか。


「マメがつぶれたみたいなんだ」


近ちゃんは午後も走るっていってるんだけど、アイツにとっての本番は
来月のインターハイ予選だからさ、無理はさせたくないんだよ。だから
残念だけど決勝は棄権しようと思うんだ、と高木くんはいった。
確かに代わりに誰か走れる人といっても、陸上部員の近ちゃんの代わりが
務まる人なんていない。


だけどー

< 69 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop