素直になれない私たち
私が翔平の様子を見に行っていたのが谷口先輩にすっかりバレていた頃、南は
またしても後輩の女の子に呼び出されて、うちのクラスが陣取っている席から
少し離れた通路を出たところで誕生日のプレゼントを受け取っていた。
ただ嬉しそうにしているというよりは相変わらずちょっと複雑そうな、困って
いるような表情を浮かべている。南はプレゼントが入っている紙袋を目の高さに
持ってぶらぶらと揺らし、ひとつ大きくため息をつくと、後ろを振り返って席に
戻ろうとした。
「うわっ!」
南が大声をあげて驚いたのも無理はない。
すぐ後ろに晴夏が立っていたのだ。
「ななな何、どした、こんなとこで」
「なんでそんなに動揺してんの」
南はまるで浮気がばれて焦っている男のようだ。通路からなぜか階段側へと
後ずさりし、右手に持っていたプレゼントの紙袋を体の後ろに隠したが、
ぶらぶらと揺れている様子が当然晴夏には丸見えだ。
「それで何個目?」
そういわれ、南は隠しきれていなかった紙袋をあらためて(いや今更無駄なん
だけど)自分の背中の後ろまで持ち上げた。
「…3個目、かな」
「よかったじゃん、モテてるみたいで。念願の彼女ができる日も近いんじゃ
ない?」
にこやかな表情の晴夏に対し、相変わらず南の視線は泳いでいて、晴夏のほうを
見ようとはしない。そんな南の態度を見て晴夏もスイッチが入る。