素直になれない私たち

「ねえ、南どこにいるか知らない?」


借り物競争がもうすぐ始まるっていうのにまだ集合場所に来てないのよ、と
実行委員のまっつんがスタンドに現れた。今うちのクラスは優勝争いしてる
っていうのに、棄権とかマジでないから、といって南を探している。


「そういえばさっきまた1年生に声掛けられて向こうの方に行ってたけど」


誰かがそういって指差した方向に視線を向けると、晴夏に肩を借りて右足を
引きずって歩いてくる南の姿が見えた。


「え、何やってんの南」


「ごめん、さっきちょっと階段踏み外して足捻っちゃった」


なぜか南より先に謝る晴夏にほんの少しの違和感を感じつつ、あっという間に
みんなで南と晴夏を取り囲み、このタイミングで足を捻るという痛恨のミスを
した南を責めつつも、すぐに誰を代わりにエントリーするかという話に移行
していった。
まっつんを中心に、誰なら勝算があるか考える。そして、忘れちゃいけない
のは誰が出たら盛り上がるのか。特に実行委員のまっつんはこの点を考えていた。
そう、借り物競争といえば、お約束の『好きな人』というお題が1レースに1枚
必ず紛れているのだ。


「...みんな、人選は私に任せてもらってもいい?」


そういうと、みんなまっつんの言葉に静かに頷いた。そしてまっつんの視線が
向かう先にいたのはー


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