素直になれない私たち
私と翔平は2番目にゴールできた。
しかし借り物競争はカードの内容と一致していることが確認できて初めて
順位が確定する。判定はいかに。
「俺確認してもらってくるから、そこで待ってて」
そういうと、翔平は何人かいる真偽判定係の中で迷わず谷口先輩の
ところに向かった。
「お願いします」
翔平が自分で引いたカードを谷口先輩に差し出す。
そのカードを見た先輩は、数秒間何かを考え込んだ後、下を向いたまま
『はい、オッケー』といって私たちの2位を確定させた。よっしゃ、
20点ゲット!と喜ぶ私によかったな、といってくれた先輩がその直後に
そのまま持っていたカードを右手でくしゃっと握りつぶしたことには
気づかなかった。
翔平と2人でクラスのみんなのところに戻り、2位確定を報告すると
手計算によれば全体の2位になった、と盛り上がった。
「『席が前後の人』なんてカード作った記憶ないんだけどな」
スタンド席にいたまっつんが晴夏の横でそう呟いていた。
今日急遽追加したのかな、と訝しげに話すまっつんに晴夏が返す。
「実行委員からOK判定出たってことはあったんじゃないの?」
考えすぎだよ、と晴夏がまっつんの背中をぽんと軽く叩く。
そして同じ頃、谷口先輩も純希先輩の隣りで苦笑いしていた。
「『あかりには手を出すな』ってことだよな、コレ」
そういって握っていた手を開いて中にあるくしゃくしゃの紙を
手のひらの上に乗せた。真ん中に『好きな人』と書かれたその
紙はその後つむじ風に吹かれてどこかへ飛んでいった。