素直になれない私たち

応援席が勝手に盛り上がる中、リレーの選手たちはトラックの外で
準備運動や作戦会議をしていた。各学年から2チームずつ、計6組で
競い合う体育祭最後の競技。

翔平が走る順番は近ちゃんと同じ走順、つまりアンカー。ぶっつけ
本番で走ることになるので、せめて少しでも走ることに集中できる
ようバトンの受け渡し回数を減らそうという配慮だ。
しばらくすると係から声を掛けられ、それぞれ所定の位置に散って
いく。いよいよスタートが近づいてきた。

私はスタンド席からクラスのみんなと一緒にリレーのメンバーがそれ
ぞれの位置に着くのを見守っていた。


「なんて顔してんのよ」


晴夏にそういわれ『え?』と返した私の声は裏返っていた。


「みんなのテンションが上がっている中で一人だけ祈るような顔して
るよ」


あかりが翔平のこと信じないでどうすんの、と背中を叩かれ、私は
大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。うん、とひとつ頷いて、
私はスタートを知らせる乾いた音が鳴り響くのを待った。




「位置について」




観客席で見守る生徒たちも一瞬静まりかえり、私は隣りにいる晴夏の
腕を思わずつかんだ。


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