素直になれない私たち

「よーい」


パーン!と鳴り響く爆音とともに6人の走者がスタートをきった。
やはり3年生のチームが前に出た。先頭はやはり3-Dだ。
第1走者の水野くんがスタートで少し出遅れて、第2走者の伊藤くんに
バトンが渡った時点でうちのクラスは4位。でも第3走者の加藤くんが
1人抜いてアンカーの翔平には3番目にバトンが渡った。
無意識に私はスタンド席の一番前まで降りていた。目の前で翔平が
1人抜いて、一番前を走る3-Dに徐々に近づいていく。周りのみんなも
ヒートアップして言葉にならない声を上げて翔平を応援している。



「翔平、行けーーーーーー!」



そう叫んだのと同時に、翔平は最後の1人を抜いて、僅かな差で一番
最初にゴールテープを切った。周りが歓声を上げたのと同時に翔平は
勢いを止められず5メートルほど先で倒れこみ、そこに先に走った3人が
集まってきて抱き合って称え合う。
スタンドからクラスメイトもグラウンドに降りて4人を取り囲み、写真を
撮ったりしているのを私と晴夏はスタンドに残って眺めていた。


「行かなくていいの?」


「うん、後にする」


そういって、私は羽織っていた翔平のジャージをぎゅっとつかんだ。
今翔平の側に行ったら、きっと頬が紅潮しているのがわかってしまう
から。何もいっていないのに、晴夏は全てを見透かしているかのように
そっか、といって私の頭を撫でた。

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