素直になれない私たち
刺客、現る
翔平の活躍でうちのクラスは見事に優勝しアイスをゲットした。
その後の祝勝会と称してみんなで行ったカラオケでも大いに盛り上がり、
まだ話をしたことのなかったグループの子たちとも打ち解けることが
できた。『体育祭を通してみんな仲良くなろう!』というコンセプトに
まんまとハマったわけだ。
休み明けの月曜日、みんな疲れも見せず元気に登校していた。
そんな中で南だけが何とも言い表せない雰囲気なのが気になる。
例えるなら、右手と右足が一緒に出ているような『変』。
2時間目の授業が終わったところで私は晴夏に尋ねてみた。
「晴夏、なんか南変じゃない?挙動不審っていうか」
「そう?いつもあんなもんじゃない」
「えー、でも今日来てから1度も私たちとしゃべってないよ。本当に何も
知らないの?」
晴夏はリップクリームを塗りながら答える。
「誕生日プレゼントにキスしただけ」
「そうなんだ...え?」
いつもの5倍くらい目が開いてるよ、と晴夏はのんきに笑うけど、そりゃ
そんな話を聞いたら誰だってこんな顔になるでしょ。誕生日にキスの
プレゼントって、少女マンガか!とつっこみたくなった。そして私は
あることに気づく。
「...南が階段踏み外して足捻ったのって、あれ晴夏のせいでしょ」
さあね、と晴夏はまたしても涼しい顔で笑った。