素直になれない私たち

「えー、何となくだけど、今までより距離感が近くなってる」


そういわれて、2日前の体育祭を思い出す。リレーの後、短い時間
だったけど翔平の心に近づいて本音を言えたあの瞬間。そして、
2年ぶりに繋いだ大きな手。無意識ながら距離感を縮めていたのだ
ろうか。
恐るべし恋愛番長の洞察力。


「晴夏はどうなの。キスしたってことはそういうこと?」


そういうことって?と晴夏が聞き返す。そりゃアレでしょ、付き合い
始めたのってことよ、というと、晴夏があっけらかんとこういった。


「いったでしょ、誕生日のプレゼントをあげただけだって」


だから何も変わってないし、今までどおりだよ、と晴夏はいうけれど、
あの南の挙動不審っぷりを見るとそのプレゼントが相当大きな一撃に
なっているのは確かだ。


「好きでもない人にそんなことしないくせに」


「ん、何かいった?」


何でもない、といった後、私は無言で晴夏の頬をぷにっとつまんだ。
素直じゃないよね、と私がいうと、どの口がいってんの、と返された。


「何やってんの、お前ら」


お互いに両頬をつまんで変顔合戦になっているところに翔平と南が
戻ってきた。いや、アンタたちのせいでもあるんだからね。


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