素直になれない私たち
『その時』は放課後にやってきた。
まっつんのスマホに白藤の安西さんからメッセージが届き、それを読み
ながら細川くんに指でOKサインを見せる。細川くんたちはハイタッチを
して喜び合っていた。
「ID教えてくれるって。今後は直接やりとりできるみたいよ。よかった
ね」
そういった後、まっつんはメッセージの続きを見て『え?』と声を
上げた。そして細川くんではなく、なぜか私の方を向いた。
「え、何かあった?」
今回の話に関しては私も晴夏も完全に外野のはずなんだけど、気に
なって2人でまっつんのところに近寄るとまっつんはラインの画面を
見せてくれた。
『水上翔平くんって知ってますか?友達が会いたいといってるんです
けど』
数秒間画面を見つめた後、私たち3人は無言で翔平の方に視線を向けた。
「...なんだよ」
翔平が訝しげに返すのも無理はない。だって翔平は悪くないんだから。
きっと白藤にも翔平のファンがいるということだ。とはいえ細川くんの
恋を応援するのに翔平を差し出さなければならないのは複雑だ。
そんな思いをすべて読み取ったのか、晴夏がこう聞いてきた。
「翔平を合コンに行かせちゃっていいの?」
「...別に、私が決めることじゃないし」
「まあ、よく考えたら細川が頼み込んでも水上は行かないか」
...確かに、翔平が合コンに参加する姿は想像できない。
でも、このチャンスを細川くんが逃すだろうか。