素直になれない私たち
「水上頼む、一生のお願い!俺に初めて彼女ができるかもしれないん
だよ、なあ、助けると思って!」
「興味ない」
その予感はもちろん大当たりで、まっつんから『安西さんのお願い事』
を聞かされた細川くんがどんなに頼んでも翔平がそれに応じることは
なく、いつもどおり私たちと一緒に帰宅の途についた。
「まあ翔平は合コンとか行かねーよな」
「うん、行っても絶対しかめっ面で無言」
南と晴夏に茶化されながら歩く翔平はどこが不満そうだったけど、
私は翔平が合コンに連れ出されることなく終わったことで内心ほっと
していた。それを見透かされないよう気を張っていたら口数が自然と
少なくなっていたのか、翔平がどうかした?とたずねてきた。
「ううん、何でもない。翔平が自己紹介とかしてるの想像したら
ちょっと笑いそうになって」
「お前まで俺で遊ぶな」
俺がそんなの行くわけないだろ、と当たり前のようにいう翔平に
『どうして?』と聞いたらなんて答えるのだろう。細川くんへの
返事どおりただ単に興味がないから?それとも、私がいるから、
だったりするの...?
後者であってほしい。
私、翔平が誰かのものになるのが嫌なんだ。
そう思っている自分に気づいてしまった。