素直になれない私たち
数日後の朝、いつもどおり学校に行くと教室が異様な雰囲気になって
いた。何事かと思いつつ私が教室に入ろうとしたところで誰かに腕を
掴まれ、後ろに引っ張られた。
「おはようあかりちゃん、ちょっと待ってて」
振り向くとそこにはまっつんが立っていて、明らかに不自然な形で
私は教室に入るのを止められた。
「ほら、あいつら邪魔でしょ、今から私がどかしてくるからさ」
「自分でどかすから大丈夫」
そういって中に入ろうとする私をなおも止めようとするまっつんの
目をじーっと見つめて『何か私に聞かれると困ることでもあるの?』
と問い詰めると、まっつんは観念して手を離した。
あらためて教室の中に入ると、窓際後方で細川くんを始めとした男子
たちに翔平が取り囲まれていた。私が登校したことに気づいていない
細川くんの大きな声が教室の中に響く。
「水上に会いたいっていってた白藤の子、お前がファーストキスの
相手だっていってたけどホントなの?」
思わず進めていた足が止まる。
彼らの興味は細川くんが彼女とどうなったのかではなく、翔平の恋
バナに移っていた。モテるのに今まで浮いた話がなかった翔平に
初めてリアルに関わったと主張する女の子が現れたのだからまあ
無理もないのかもしれないけど。
細川くんたちがたたみ掛けるように話し続ける。