素直になれない私たち

「あーいう子がタイプなんて以外だったわー。自己主張強めで人の
話聞かずにしゃべり倒す感じでさ、中学の時もあんな感じで押され
まくったんか?あのアキって子に」


『アキ』と聞いて2年前の記憶が蘇る。

河野亜紀。私の目の前で翔平に抱きついてキスをした子だ。
あの時の様子からも翔平がその後彼女を受け入れたとは思えないが、
なぜか河野さんはあの後やたら私のクラスにいる彼女の友人のもとに
やってきて、まるで彼氏の様子を話すかのように『今日の翔平』に
ついてわざと私に聞こえるような声で楽しそうに語っていた。
そんな彼女がまさか2年も経ってまた私の前に現れるとは思っても
みなかった。



翔平が輪の中でどんな顔をしているのか気にはなったけど、私は
無言を貫く翔平を取り囲んで盛り上がる男子たちの輪に背後から近
づいていく。私に気づいた男子が一人ずつ散っていって、最後まで
気づかずに話し続けていた細川くんに一言声を掛けた。


「そこ、どいてもらってもいい?」


努めて平静にしていたつもりだったけど、細川くんのビビり方を見て
やっぱり顔に出ていたのかなと少しだけ反省した。翔平には視線を
向けることなく着席し、周りが自然に静まるのを待った。


『アキって、例の女?』


ギリギリ遅刻回避で登校してきた晴夏がまっつんに状況を聞いて
送ってきたラインに、私はお気に入りのキャラクタースタンプで
『YES』とだけ返した。

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