素直になれない私たち
お昼休み、私は晴夏とグラウンド脇にあるベンチに座ってお弁当を
食べていた。いつになく淀んだ教室の空気感と、朝の細川くんの
アレが原因でなんとなく周りから気を使われているような雰囲気に
耐え切れず、4時間目のチャイムが鳴ったと同時に教室の外に出たと
いうわけだ。
「そのアキって女、まだ諦めてなかったって凄くない?ある意味
尊敬するわー」
晴夏が続ける。
「ところで、翔平はあかりに見られてたことは知らないんだよね。
それ、いってあげたほうがいいんじゃない?今頃アイツその話を
あかりに聞かれて内心絶対焦ってると思うよ」
「...確かに」
体育祭以来、私たちは一緒にいることが多くなった。もちろん晴夏と
南もいるので二人きりではないけれど、同じクラスになったときの
あの気まずさを思えばかなりの進歩だ。下の名前で呼び合うことも
当たり前になって、ゆっくりだけど順調に前に進んでいると思って
いた矢先に掘り返された2年前の出来事。
私があの時もう少し素直だったなら、きっとあんなに拗れることも
なかった。今はそう思える。
「今日、帰りに翔平と話してみる」
そういうと、晴夏は『おー、行ってこい』と私の肩を抱いた。