素直になれない私たち
「完全にもらい事故じゃん、それをあんな思わせぶりな言い方する
とか、白藤の女怖すぎ」
「俺は別にいいよ、お前らがわかってれば」
「『お前ら』の中にはあかりも入ってるんだよな?」
そう聞かれて黙り込む翔平に南は続ける。
「ちゃんといわないと伝わんねーぞ」
俺さ、お前と晴夏とあかりの4人で特に何の目的もなくダラダラ
してんの、けっこう好きなんだよ。だから早いとこすっきりしない
部分はすっきりさせてさ、また駅前のファミレスで飯食おうぜ。
そういって笑う南に、翔平も頷く。
「ところで、ひとつ聞いていい?」
一呼吸おいて、南が翔平に尋ねた。
「中学の時に失恋した相手って、もしかしてあかり?」
翔平は少しだけバツの悪そうな表情を浮かべた。おそらくは
まさか南に言い当てられるとは、という思いだろう。反対に
南はそんな翔平の様子を見てやっぱりな、と得意気な表情を
浮かべ、そして追い打ちをかける。
「...ファーストキスの相手もあかりだろ」
翔平が完全に目を逸らす。いつだったか、キスをしたことが
あるかと南から問われた時と同じリアクションだ。
「まあいいや、いつかゆっくり聞かせてよ。冷やかしとかじゃ
ないから、俺はちゃんとお前らのこと応援してっからさ」
そういって南は飲み終えたばかりの空の牛乳パックを翔平の
コーヒー牛乳に軽く乾杯するように当てた。翔平は自分を納得
させるように何度か小さく頷いて、南にこう返した。
「今日、帰りにあかりと話すから」
おー、そうしてくれ、といいながら南は翔平を鼓舞するように
翔平の背中をバシッと叩いた。