素直になれない私たち

昼休みが終わるまであと5分くらいというタイミングで私と晴夏は
教室に戻った。まだ翔平と南の席は空いている。5時間目を知らせる
チャイムが鳴るギリギリのタイミングで2人は教室に戻ってきた。


「どこ行ってたの?」


私が席に着こうとする翔平に尋ねると、意外な答えが返ってきた。


「...音楽室?」


えっなんで音楽室、ていうかなんで疑問形?
返事に困っているのを察したのか、翔平があかり、と私の名前を
呼んだ。


「今日、話したいことあるんだけど、一緒に帰れる?」


うん、と頷くと、翔平も小さく頷いて着席した。
きっと2年前の河野さんとのことを話そうとしてくれている。
私が『知ってる』といったら、翔平はどんな顔をするだろうか。
ちゃんと2人で話をして、私が泣きながらスマホの番号を変えに
行ったことも笑い話にできたなら、その時は私たちの関係性も
変わるだろうか。




5時間目が終わると、細川くん界隈がざわついていた。
どうやら白藤の安西さんからラインで放課後会わないか、と
お誘いがあったらしい。数名でうちの学校まで来るとのこと
で、短い休み時間に合コン(?)メンバーを選抜していた。


「水上くーん、今日の放課後」


「行かない」


細川くんの懇願にも近い誘いを最後まで聞かずに翔平は一刀
両断。もしやまた翔平を連れてこい、とでもいわれたのだろ
うか。だとしたら...嫌な予感。


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