素直になれない私たち
南が翔平を追って教室を出た頃、私たちはもう靴を履き替えて
玄関の外に出ようとしていた。いつも通りの私と、少し緊張して
いるように見える翔平。歩きながら話をするのか、それともどこ
かに寄ろうとしているのか、私はただ翔平の1歩後を歩いていた。
玄関を出て数メートル先の校門に目を向けると、うちの学校の
男子と白藤の制服を着た女子数名が見えた。きっと細川くんの
グループだ。私たちが近づいていくと、その中にいた白藤の子が
私たちを、いや翔平の姿を見つけて大きな声を上げた。
「やっと見つけたー!水上、元気だったー?」
そういって駆け寄ってきたのは、やっぱり河野亜紀だった。
怪訝そうな顔をしている翔平を気にすることもなく、河野さんは
親しい友人だったかのように話しかける。
「亜紀のファーストキスの相手ってこの人なの?羨ましい」
「モトカレ超カッコいいじゃん」
いつのまにかモトカレにされている翔平。おそらく河野さんが
友人たちに翔平の存在を誇張して吹聴していたのだろう。
もやもやを抱えながら彼女たちの話を聞かされていると後ろ
から肩を叩かれ、振り向くと南が息を切らして立っていた。