婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました
「…………王家の一族っ?!」
え? 学園長が? 知らないからっ!!
「ジェフェリーとセリーナは将来の国王と王妃だ。そのセリーナに怪我を負わせた。それだけでも十分理由になるだろう。退学くらいで済ませてやるんだ。それとも他の罰を受けたいとか?」
学園長は王族と言った事により、王太子殿下や侯爵令嬢と言った敬称で呼ぶのはやめたようだ。
「でもジェフェリー様は私の世話役でしたし、セリーナ様も大した、」
「王太子であるジェフェリーの名前を気安く呼ぶな。舌を抜いても足らん侮辱だな。王太子が庶民の世話をするなんてここでしか考えられない事だ。庶民と交流を持ち庶民の暮らしを知ると言う社会勉強だ。じゃないと世話役なんかさせるか! 大した怪我じゃないだと? 暴力を振るった事に変わりない」
「……そんな」
ただ転んでちょっと机に体をぶつけただけなのに。それにちょっとだけ足を捻ったとかその程度よ?
「ジェフェリーは婚約前からセリーナしか見ていない。あの庶民の読んでいるゴシップ誌は事実無根で訴えられ、謝罪文を載せたのち廃刊になっておる。お前の名前も出ていたから実家に帰っても大変だろうな。もし学園に残っても地獄、実家に帰っても地獄と言うことだ」
「私の居場所を無くそうとするなんて、ひどいじゃな、」
「ジェフェリーは賢い。セリーナを愛しているが故、素直に伝えられなかった事を反省している。そんなジェフェリーが他に女を作るとは到底思えない。街の噂というものは前からある。もちろん面白おかしく書かれる事もあった。しかし単なる噂だ」
「街のみんなは王族がどんな暮らしをしているかなんて分からないもの」
もっと偉そうなイメージがあったのに実際は無口だけど優しくて、私のことを見てくれた。